石垣島には、人が石になったという伝説がいくつか語り継がれています。
アイナマ石の伝説〜石になった花嫁
県道206号線を伊原間から平久保崎灯台に向かう途中、久宇良のの手前に、「アイナマ石」があり、小さな案内板が立てられています。
「アイナマ」とはかわいい花嫁を意味します。
このアイナマ石は悲しみにくれた花嫁が石になったと伝えられています。
むかしむかし、川平村に美しい娘が済んでいました。
年頃になった娘は、遠く離れた平久保村に嫁ぐことになりました。
川平村から行くには、原生林ののけもの道や、干潮時の海沿いを歩いて二日もかかります。婚談は親の勧めによるものでした。
娘はどうしても行いきたくないと、親おやに懇願しましたが、最後まで聞き入れられることは、ありませんでした。
そして、ついに、嫁入りの日がやって来きました。
準備を整えた花嫁とお供の人たちは、川平村に向むかって、平久保村を出発ました。
伊原間の近くに差し掛かかった時、馬に乗のっていた花嫁が、用を足しに行くと言って、馬をおり茂みのなかへと入っていきました。
なかなか戻らないので、お供の者があたりを探しましたが、花嫁の姿はどこにもありませんでした。
昼なお暗い山奥に、 座った恰好の花嫁に似た冷たい石がひっそりと立っているばかりでした。
いつしか人びとはこの石のことをアイナマ石と呼ぶようになりました。
アイナマ石は一時期、道路拡張によって無くなったといわれていましたが、昭和63年(1988年)に再調査をしたところ山中に残っているのが確認されました。
琉球王朝時代、平久保は隔絶された陸の孤島でした。
さらにマラリア蔓延の地と恐れられた所でもありました。
このような背景の下に「アイナマ石」の伝説も生まれたのでしょう。
このような石化伝説は、 頭税制度下で苦しんだ農民や女性たちのやり場のない悲しみと怒りが石となって伝わってくるようです。